10 August, 2006

Alfred Hitchcock / "Rear Window"

先週観た映画のレビューを少し。
(レビューと呼べる程のものではないです、忘れないよう書き留めておきたかっただけ)
Alfred Hitchcock / アルフレッド・ヒッチコック // Rear Window / 裏窓 // 1954

以前から好きでよく観ていたけどこの映画は観たこと無かった。
実はこの映画を観るとヒッチコックのエッセンスが全て理解出来ると言われている、らしい。
このお話はケガをしてアパートで静養せざるを得なくなったカメラマンが、共有する中庭を挟んで建ついくつかのアパートを覗いているうちに色々な人間模様が分かり、やがてはある不思議な事件に気づいていくというストーリー。

出来るだけ内容については触れません。
まずは主人公の紹介から始まる。
その紹介の仕方が秀逸。
部屋にあるいくつかの小道具によりどのような職業(カメラマン)、どんな写真を撮っているかなどが分かるようになっている。
カメラはほとんど主観(主人公の)で進行して、時には主人公の視線の更に先をお客さんに見せる。
カメラがオーバードライブしていく時は気持ちよい。
この辺りの伏線の張り方は独特、しかも”すかし”が無く必ずどこかに絡んでくるので楽しい。

脇役にもしっかりとキャラ設定がありなかなか憎い。
印象的だったのは曲作りに悩む音楽家と孤独な中年女性の関係。(全くメインの事件とは関係ナシ)
映画の終盤になり曲が完成に近づく、ピアノが中庭を通して周りの住人に聞こえてくる。
あるものはその曲に恋人との時間を委ねている、一方ミス・ロンリーと(勝手に)呼ばれているその女性が部屋で自殺を図っていたが、曲が聞こえてきて自殺を思いとどまるシーン。
むやみに色んなシーンで音楽を流すのではなく、内容とリンクし成長、変化していく音楽というのはわざとらしくなく、臭くなくよい。

シーンの撮り方で気に入ったのは、アパートのどの部屋にも灯りが灯って中の様子がうかがえる時、事件の犯人の部屋だけ暗いまま。
部屋にいるのかいないのか分からなかったのだが、部屋に男がいることを確認出来たシーン。
どうしたか?遠くにある真っ暗な部屋でタバコの火の存在で在宅を示す、洒落てるね。

恋愛、ロマンスについてはヒッチコックの他の作品を通じてそうだと思うんだけどシニカル。
主人公の恋人は典型的な都会の働く女性。
ファッションの仕事に就いている。
(若き日のグレース・ケリーが演じている。最初に登場するシーンはビックリするくらいキレイ。)
主人公は戦争を撮りに、カーレースを撮りに、あらゆる厳しい条件のところに赴くカメラマン。
全く正反対な彼女は仕事を続けたい自分に向かないんじゃないかと思っている主人公。
結婚を望み、結婚すれば落ち着いてくれると思っている彼女。
映画の終盤ではその彼女がドキドキハラハラ(死語)させながらも期待以上の活躍を見せ、事件の解決に貢献。
エピローグは二人が部屋でくつろいでいるシーン。
彼が起きている間は冒険ものの小説を読んでいるが、居眠りにつくのを確認してすぐファッション雑誌を手にとる。
男女の根本的、決定的な違いを認め、むしろ受け入れているからこその描写。

ずらずらっと気に入ったディテールを書き並べたけど、メインのテーマはやはり自分と隣人との関係、隣人同士の関係、主観と客観のバランスだろう。
誰もが自分以外の存在、自分以外の人達の関係を少なからず気にしていて、その関係を見てみたいと思っていることを前提に拡大し、他者の生活まで覗き見ることを中心に進む。(客観)
映画の進行は主人公の目、主人公の持つ望遠カメラや双眼鏡の視線で進められる。(主観)
この相反する要素の絡み方がスムーズで面白い。
事件が起こることがストーリー上、大きな出来事ではあるけどそこにそれほど意味は無く、むしろそれを解いていく時に男性の思考と女性の思考の違いが如実に顕われること(多少強引ではあるけど)は裏テーマといったところか。

日本の巨匠、北野武の作品のほとんどは徹底して個人の寄りの画が無く、そして誰に感情移入するでも無く第3者の視点で客観視して観ることができるので全く違うテイストのように思えるけど、主人公の部屋の窓からアパート全体を俯瞰する画面で各部屋の様子が見えるシーンでは北野映画を思い出した。

思いつきで観た映画だったけどこういう時に名作と呼ばれるものを観て良かったな、と。
最後に、ヒッチコックのシルエットを抽象化した有名なサイン。
これ誰が作ったんだろう、かなりかっこいい。

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